静岡県立美術館の「糸で描く物語」展が見たい。きっかけは数年会っていない友人のツイートでした。
近年、静岡県民の友人ができたわたし。お茶や銘菓をいただき、2022年には初来静を果たし、にわかに仕入れた静岡の知識をここぞとばかりにひけらかしたのです。その結果、あれよという間に話が決まり、二度目の静岡訪問となったのでした。
日常と地続きの美術館
静岡鉄道「県立美術館前」駅南口から緩やかな坂を上ると、緑地と彫刻の間を抜けていく遊歩道が現れます。
お散歩コースによく採用されているのか、何度も犬と人とすれちがう。どんどん歩いていくと、美術館の前に、入り口が見えないくらいたくさんのテントが立っていました。美術館の庭でクラフトマーケットが開かれていたのです。企画展の関連イベントでもあるマルシェはたくさんの人が訪れ、賑わっていました。
企画展「糸で描く物語」
展示の始まりは、民族にまつわる刺繍。第1章ではルーマニア、スロヴァキア地方の衣装や枕カバー、第2章ではイヌイットの壁掛けが紹介されています。第1章の刺繍は、婚礼の衣装や嫁入り道具として作られたものが多く、繊細で華やか。第2章ではイヌイットの普段の生活、狩りの様子や動物、神さまや精霊をタペストリーの上に表現しています。刺繍だけでなく、彼らの暮らしや宗教に興味を惹かれる展示でした。
正直なところ、イヌイットの神さまや精霊はキャプションだけでは分からないところも多く、第1章の婚礼にまつわる文化などももっと知りたかった。なので、さらに掘り下げて「民族と刺繍」というテーマだけで展示が構成できるのでは?と思ったけれど、この美術館のカラーを考えると、それはベストな選択ではないかもしれないと思いました。
この日はおしゃべりをしながら見てもいい日だったのですが、終始わいわいと盛り上がっていました。続く第3章(刺繍でできた絵)や第4章(ファッションに関連した作品や技巧を魅せる刺繍)はより親しみやすく、思ったこと感じたことを口に出しやすい内容だったと思います。気軽に日常の延長として楽しむ美術館という視点で考えると、バランスよく色々な側面を紹介する方が親しみやすいだろうと感じました。マルシェやお散歩に訪れる人がたくさんいるのも、生活の中に美術館とその周辺が溶け込んでいる感じがするよね。
企画展の出口がいきなり常設展示室の廊下につながっているのも、いつもの展示の延長なんだよってことかなのかも。今までに行ったところは、部屋や階数が異なる場合が多かったので驚きました。
糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。
- 開催期間 2023年7月25日〜9月18日
- 開催場所 静岡県立美術館
- 静岡県静岡市駿河区谷田53-2
第1章のみ、撮影・SNS配信可。
巡回情報
- 2023年5月20日〜7月17日
- 新潟県立万代島美術館
- 2021年4月21日〜6月27日
- 横須賀美術館(神奈川県)
ロダン館
もう一つの目的地、ロダン館。以前から行きたくて、行きたくて、楽しみにしていたのです。入室すると眼前に「地獄の門」。正面上部が見えるバルコニーが設置されていました。
高い天井、石畳のような壁。広場と広場をつなぐ階段。何となく神殿を思わせる広々とした空間に、黒くつややかな彫刻が映える。空間も併せて展示だなあとしみじみ。床に書かれた「地獄の門」の銘文と各文豪による訳文を比較するのも、それぞれの個性や受けた影響が窺えて楽しかったです。
しかし、彫刻面白いなぁ。三次元だから単純に二次元よりも情報量が多いし、サイズが大きいと存在感も比例するような気がします。あとはやっぱり触ってみたい。ダメなのは分かっているのでやりませんが、思う存分撫で回したらどんな感じなんだろう。
彫刻に特化した美術館は、日本にもまだまだあるので、たくさん行ってみたい。