【駆けぬけ博物館の旅】シーレ〜橋本コレクション〜極楽鳥

地方民の朝は早い。今日最初の飛行機で一路東京へ、向かう電車はもちろん始発である。空港は思いのほか人がいっぱいで、少し面食らう。昨年乗った飛行機も席は埋まっていたような気がするのだけど、やはり新型コロナウイルスの影響は大きかったのか。

困ったのは朝食で、唯一開店している売店の棚が空っぽ。乗り換えの合間に、品川駅のホームで天むすを頬張り、上野公園にたどり着いた。

エゴン・シーレ展(東京都美術館)

旅の目的のひとつ。エゴン・シーレは、クリムトやワーグナーと同じ時代の画家だ。彼らはウィーン分離派というグループに属していた。

ウィーン分離派はポスターを多く作っているので、とにかくグラフィック好きと相性がいい。ここでもいくつか展示されていて、やっぱり好きだなあとしみじみする。専門学校の卒業制作と似た作品があり(作者だからこう思うのであって、実際には天と地ほど差があることを補足しておく)あの頃知っていたら、もっと洗練されたものを作れただろうかなどと考えた。

シーレの絵は、色合いや画風から病的なイメージがあるが、実物の印象は少し異なる。わたしはそのことをウィーン・モダン展(2019)で知った。不穏な絵が多いにも関わらず、彼の作品から感じるものは、痛々しさや不安とは違うような気がするのだ。不思議なことに。

そして、自画像の多さ。極限まで自分と向き合うのは相当な苦行であると思うのだが、若さと自信と才能ゆえんか。しかし、作品に描かれる彼は決して美しくはない。いったいどんな気分で描いていたのだろう。

流行病での早逝が謳い文句になっているが、それはつまり突然命を奪われた訳で、死に向かっていく悲愴感はない。それよりも、第一次世界大戦で従軍した経験の方が大きな影響を与えているといえる。

それまでの表現主義的な画風から、写実的な描写へ。彼ほどの才能をもってしても、現実のもつ暴力的なまでの強さからは逃れられないのか。諦念を感じるが、新しい画風には美しさと愛嬌が増し、惹きつけられたのもたしかだ。

余談だが『横たわる長髪の裸婦』のドローイング(このモデルも奥さんだったと思うが図録に書いていないので記憶があやしい)はかわいい。別の裸婦画で奥さんをモデルにしたのに頭部は別人にしたところといい、なんだか愛を感じた。

レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才

  • 開催期間:2023年1月26日〜4月9日
  • 開催場所:東京都美術館
  • 東京都台東区上野公園8-36

橋本コレクション展(国立西洋美術館)

西洋美術館は東京都美術館と同じ上野公園内、徒歩数分の距離にある。常設展示室に橋本コレクションが展示されると聞いたので足を伸ばした。

宝石展(2022)にも一部が展示されていた指輪のコレクション。時代や場所もさまざまで、文化や生活の片鱗が見えるのがたのしい。

暗い部屋に煌めくギラギラが目に痛く、展示ケースと壁にまとめられたキャプションの間を行き来するも内容が頭に入らずで、早々に退散。

橋本コレクション展ー指輪よりどりみどり

  • 開催期間:2023年3月18日〜6月11日
  • 開催場所:国立西洋美術館 版画素描展示室
  • 東京都台東区上野公園7-7

お昼休憩(上野駅構内・たいめいけん)

朝から降り続く雨と3時間睡眠、何より空腹が原因だった。脊髄反射でオススメセットを注文。

極楽鳥(インターメディアテク)

食後は、撮影が全面解禁になったインターメディアテクへ。映え写真より興味のおもむくままに記録したいという様子の人が多くて、勝手にほっとする。体力が残っているうちに、早速3Fへ向かった。

『極楽鳥』は、東京大学総合研究博物館と、ヴァン クリーフ&アーペルが支援する宝飾芸術の教育研究機関「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」が共同で主催する展示だ。

当然ジュエリーは見どころなのだが、鳥の剥製標本が露出展示されているのが、何気にすごいんじゃないだろうか。天井付近から垂れ下がったオナガドリの尾が空調で揺れているなんて、常設展示にしていたら絶対傷むよね。圧巻だった。

もちろんジュエリーもたいへん眼福でした。

インターメディアテク開館十周年記念特別展示『極楽鳥』

  • 開催期間:2023年1月20日〜5月7日
  • 開催場所:INTERMEDIATHEQUE 3F
  • 東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE 2・3階

夜遊び&ディナー

2軒目のバーがとんでもなくオシャレだった。なお1軒目は焼肉だったのに、しゃべりすぎて写真がない。

夜は約束があるので、早めにチェックインして、ひたすらベッドで木偶と化していた。おかげで出かけるころには元気を取り戻したのだが、あきらかに限界に達するまでの時間が短くなっていて愕然。