「ルネ・ラリック展」ふくやま美術館(広島県福山市)

コロナ禍が少し落ち着いたこの頃。ちょっと足を伸ばしてふくやま美術館(広島県福山市)まで、ルネ・ラリックのガラスを見に行ってきました。

北澤美術館(長野県諏訪市)が所蔵する作品約100点が紹介されています。タイトルやチラシから推測するに、2020年に東京都庭園美術館で行われた展示の構成に近いようです。

※広島では展示されていない作品もあります。

幻想的なガラスの世界

硬質なガラスとなだらかな凹凸で象る、精霊たち。これが見たかったのです。素材の持つ透明感と光の揺らめきが相まって、えも言われぬ幻想的な美しさ。

そして、精緻でダイナミックな造形の生きもの。鎌首をもたげる蛇も、ビチビチと跳ね上がる魚も、リアルで今にも動き出しそう。

ジャポニズム的な表現に惹かれるのは、魂レベルで刻み込まれた美意識があるのでしょうか。なんて言いつつ西洋的なものも大好きだけれど、舶来品に惹かれると言い換えれば、それはそれで日本人らしいような気もします。

「欲しい。家に置きたい」いつになく真顔でブツブツと呟きながら見てしまったのは、芸術でありながら、生活の品であるからかもしれません。多くが量産品であり、富裕層向けではあれど実際に使用されていたものです。

ふくやま美術館にて撮影(撮影可)

ただ、一つだけ。ずっと頭に引っかかっていたことがありました。

アール・デコってなんだろう

ラリックはアール・デコのガラス作家です。アール・デコはアール・ヌーヴォーのすぐ後に流行した芸術のジャンルで、ざっくり言うと正反対の特徴を持っています。

アール・ヌーヴォー
アール・デコ
  • 1890〜1910年代に流行
  • 曲線的フォルム
  • 動植物などのモチーフ
  • ミュシャ、ガレなどが有名
  • 1910〜1930年代に流行
  • 直線的構成
  • 幾何学的なモチーフ
  • カッサンドル、ラリックなどが有名

簡単にまとめるとこんな感じ。

ところが、ラリックと直線的・幾何学的というワードが結びつかない。動物や精霊のモチーフを多用しているし、直線よりも曲線的なイメージの方が近いのです。ミュシャやガレに比べればシンプルかもしれないけれど、どうにも腑に落ちなかった。

答えはラリックの経歴にありました。

アール・ヌーヴォーのジュエリー/アール・デコのガラス

ラリックは元はジュエリー作家でした。活躍していたのは1870〜1910年頃。アール・ヌーヴォー期の真っ只中です。

‘Dragonfly-woman’ corsage ornament
CALOSTE GULBENKIAN MUSEUM

しかし、アール・ヌーヴォーの時代が終焉を迎えると服装の流行も変わり、ラリックの作る複雑で繊細なデザインは似合わなくなってしまいます。

そこで、ラリックは時代に合わせたジュエリーを作るのではなく、ガラス作家に転向しました。ジュエラーとして培った技術を活かし、新しい分野に踏み出したのです。50歳を過ぎてからの大きな決断でした。

アール・デコの時代に返り咲いたラリックですが、アール・ヌーヴォー的な芸術性と決別したわけではありませんでした。両方の要素が共存しているからこそ、魅力的だったのではないでしょうか。ふたつのジャンルを融合させたとも言えるのかもしれません。

北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美

  • 開催期間:2021年9月18日〜11月21日 ※10月1日開幕
  • 開催場所:ふくやま美術館
  • 広島県福山市西町2-4-3

同名の展覧会開催情報

  • 2022年9月10日〜11月27日
  • 兵庫陶芸美術館
  • 2022年6月4日〜8月28日
  • 岡崎市美術博物館(愛知県)
  • 2020年4月26日〜6月21日 ※5月12日開幕
  • 宇都宮美術館(栃木県)
  • 2020年2月1日〜4月7日 ※2月29日閉幕
  • 東京都庭園美術館

参考書籍