「志村ふくみ展 いのちを織る」姫路市立美術館 (兵庫県)

草木染めに興味を持ったのは、中学生の頃。梨木香歩さんの書いた『からくりからくさ』と『りかさん』という本がきっかけでした。人形を扱った物語で、どちらにも草木染めが登場するのです。

とくに『からくりからくさ』では、折り重なる女たちの感情と結びつくように草木染めと機織りが描かれており、印象に残っていたのでした。

志村ふくみさんを知ったのはその後です。いつか作品を拝見したいと思っていたのですが、念願が叶いました。

人間国宝で染織家、志村ふくみさん

染織家とは、染めと織りを行う人。自然の植物を使って色を出す草木染めという手法で糸を染め、機織り機で布を織りあげます。すべて手作業です。

母・小野豊の影響で織物に出会った志村ふくみさんは、32歳のときに滋賀県近江八幡に移り、染織の道に進みます。そこから数々の賞を受け、1990年には紬織で国指定重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。

そして、志村さんが「植物の命の色をいただく」という草木染めの手法。展示でも触れられていましたが、植物から色素を煮出して染め上げると、灰色がかった少しくすんだような色になります。しかし決して濁った色ではなく、かえって基の色が引き立つような、何とも言えないニュアンスになるのです。

複雑な色合いと交差した糸が作る布の美しさは、テレビや印刷では再現しきれないものでした。作品保護のため照明は暗めに設定されていますが、日の光の下ではなお美しいでしょう。

情念を絡めて語る色の表現

度肝を抜かれたのが、志村さんの色を語ることばです。

「初めから他の色を受け容れる鷹揚さが茜(ことに西洋茜)の色には備わっているのだろう。」(p.67)

「蘇芳は(略)媒染の違いで濃い臙脂から真紅、海老茶などさまざまに変化し、志村はそこに、変身する女の魔性を感じるという。ことに明礬による赤は命のいろというにふさわしいが、それゆえ他を寄せ付けぬかたくなさがある。」(p.30)

いずれも『志村ふくみ いのちを織る』より

とくに赤についてのことばが記憶に残るのは、女に例えられるからでしょうか。情念を絡めて語られる表現は、するりと自然に頭の中に入ってきて、その多様さと色の世界の広がりに、ガツンとやられたのでした。

あまりにも衝撃を受けたので、作品目録の片隅に、あれもこれも書き留める始末。見かねた美術館の方がバインダーを貸してくださるくらいでした。なお、引用にP数を記載しているのでお察しかと思いますが、図録にすべて載っています(迷わず買いました)

体験を表現に落とし込む

志村さんは、新しいものを取り込むことにも積極的。沖縄旅行の後に制作された青地に白い十字模様の絣や、インドでの印象を反映させた大胆な色合いの切継など。旅先で出会ったものを作品にしています。

クレーの画集に没頭し、ゲーテの色彩論に触れるなど、柔軟に新しい知識を吸収し自分の表現に昇華してしまう。とても印象的でした。

YouTubeで関連動画が公開されています。

動画で紹介されているコーナーや公開レクチャーがあったのですが、新型コロナウィルスの感染予防のため、多くがYouTubeで公開されています。

志村ふくみ展 いのちを織る 滋賀県立近代美術館コレクションを中心に

  • 開催期間:2020年7月4日〜8月30日
  • 開催場所:姫路市立美術館
  • 兵庫県姫路市本町68-25

参考書籍(図録)

志村ふくみ いのちを織る』志村ふくみ著(東京美術)